最近、話題になっている「ArtCraft」や「WordCraft」「GridCraft」「DeckCraft」。Adobe Creative CloudやMicrosoft Officeの代替を目指す、AIを活用して開発されたソフトウェアです。
Claudeなどの生成AIを開発に活用し、Rustなどの技術を使って構築されたこれらの製品は、無償で利用できることもあり、注目を集めています。
しかし、現時点では、特に重要な書類の作成やビジネス用途で使うことは到底お勧めしません。
信頼を失いかねない
純正のソフトを完全に再現することはほぼ不可能ですし、予期せぬ不具合やエラー、互換性の問題が発生することも十分あり得ます。
もちろん、生成AIを使って開発されたというだけで、必ずしも品質が悪いとは限りません。しかし、開発初期のソフトウェアでは、機能が実装されていることと、それが正しく動作することは別問題です。

特に、他人に見せる書類にこういうソフトを使って、レイアウトが崩れていたり、文字化けしていて文字が正しく表示されなかったりすると、相手に対して「ああ、この人はまともに確認していないんだ」と思われかねません。
ビジネスの現場だと「大切な書類なのに、まともに読めないなんてどういうことだ。ふざけるな。今回の話はなかったことにさせてください。」ということにもなりかねません。
当然、Microsoft OfficeやiWork、Google Workspaceといった実績のある製品を使うことで、こうした互換性の問題を軽減できる場合があります。
ただし、これらの製品を使ったからといって、絶対に問題が起こらないわけではありません。
もちろん、実績のあるソフトを使っていたとしても、校正やレイアウトの確認をしっかりすることに越したことはありません。
信頼できるソフトを使おう
他社のソフトウェアを無断で複製したり、ライセンスに違反したりすることは当然アウトですが、独自に開発され、互換性がある程度確保されたオフィススイートを使うこと自体は問題ないと思っています。
20年以上前ですが、私もOpenOfficeを使っていましたし、過去には自治体などでも導入されてきた実績があります。
これは長年にわたって開発者やコミュニティが改良を積み重ねてきたソフトウェアであり、決して短期間で安易に作られたものではありません。
もちろん、AIを活用して開発されたソフトウェアであっても、十分な検証や改善が行われていれば、信頼できる製品になる可能性はあります。
AIを活用して開発されたソフトウェアを、全て否定したいわけではありません。この点は、どうかご理解いただければ幸いです。
LibreOfficeとApache OpenOfficeの差異
LibreOfficeやApache OpenOfficeなどは、かつてのOpenOffice.orgから派生したソフトウェアですが、両者にはいくつかの違いがあります。
Apache OpenOfficeは従来型のメニューやツールバーを中心としたUIを採用している一方、LibreOfficeでは従来型に加えて、Microsoft OfficeのリボンUIに似たタブ形式のUIも選択できます。
Office 2007から採用されてきたリボンUIは、登場当初から賛否が分かれ、今でも嫌っている層が一定数います。
そういった方にも、LibreOfficeやApache OpenOfficeはおすすめです。また、LibreOfficeはMicrosoft Office形式との互換性向上にも継続して取り組んでいます。
もちろん、複雑な書類などでは表示が崩れる可能性もありますが、長年の開発実績があるという点は、大きな安心材料の一つでしょう。
正規ライセンスと品質確認の大切さ
最後にまとめです。
正規のソフトを正規のライセンスで使い、作成した成果物について責任を持つことが、他人から信頼されるための基本だと思います。
今回の記事は、「当たり前のことが当たり前にできない」人たちに向けたものでもあります。
ただし、ここでいう「当たり前のこと」とは、必ずしも高価な商用ソフトウェアを購入することではありません。
ソフトウェアの利用条件を守り、用途に合ったものを選び、完成した成果物をきちんと確認することです。
Office製品が高いと思っていても、無理に購入する必要はありません。
また、「Adobe税を払いたくないから」という理由で、無料の代替ソフトウェアを探すこと自体も、決して悪いことではありません。
しかし、安いから、無料だから、あるいはAIで短期間に開発されたからという理由だけで、信頼性が十分に確認されていないソフトウェアを重要な業務に使うことはお勧めできません。
LibreOfficeやGIMP、Paint.NETといった優秀なフリーウェアはたくさんありますよね。
そうした選択肢があるにもかかわらず、互換性や安定性が十分に検証されていないソフトウェアを、何の確認もせずに使う必要があるのでしょうか。
新しいソフトを試すこと自体は悪くないですが、ただし、他人に提出する書類や、取引先とのやり取りに使用するのであれば話は別です。
たとえ、AIを活用して開発されたソフトウェアで期待どおりの成果が得られたとしても、それだけで品質や安全性が保証されたことにはなりません。
逆に、AIを活用して開発されたソフトウェアであっても、十分な検証が行われ、適切なライセンスで提供されているのであれば、それを利用すること自体に問題はありません。
大切なのは、どうやって作られたソフトウェアなのかということだけではなく、それが本当に信頼できるものなのかを見極めることです。
自分が使うソフトウェアの選択には、自分自身で責任を持つ。
そして、他人に見せる成果物であれば、相手に迷惑をかけないよう、十分な確認を行う。
それこそが、一人の利用者として守るべき最低限のルールだと思います。